駐輪場を導入する際には、工事が伴います。実際にどのような工事が行われるのか、どのような仕上がりになるのかなど、事前に詳しく知っておきたいとお考えの方は多いでしょう。
ここでは、駐輪場導入にあたり必要な工事や具体的な施工事例などをご紹介します。
駐輪場の導入に際しては、まず開設予定地の敷地および周辺環境に関する調査・聴取に着手することが肝要です。
具体的には、開設予定地の土地・敷地面積、形状、ならびに斜面の有無などを正確に把握することは言うまでもありません。また、計画する駐輪場の予想利用者数、利用者の目的(通勤、購買、レジャー等)を算定する必要があります。
さらに、周辺における競合となる既存駐輪場の分布状況を把握し、該当地域において駐輪場に関する条例や利用条件等が適用されているか否かについて、詳細に調査を実施します。
上記の調査・聴取結果を踏まえ、開設する駐輪場のプランニングおよび設計を実施します。この際、市区町村の条例や設置条件が課せられている可能性があるため、確認が必須です。
一例として、豊島区においては、遊技場、学習施設、病院などの施設に対し、対象面積15平方メートルごとに1台分の駐輪スペースの附置義務が課せられています。
これらの条例なども踏まえ、新設する駐輪場の収容能力、設置する駐輪ラックの形式(例:垂直二段式、スライド式など)、ならびに駐輪スペースへの屋根設置の要否などを、プランニング・設計に反映させます。
プランニングおよび設計案が確定し、自治体および関係省庁の許認可が得られた後、工事段階へと移行します。
第一段階は、土地の整地です。地面の高さ、傾斜、排水設備の状況を確認し、必要に応じて養生等の準備作業を実施した後、土間コンクリートの基礎を構築します。屋根や駐輪用ラックを設置する場合は、アンカーの施工も同時に行います。
駐輪場内の区画線設置は、各自転車の駐輪スペースを区切ることが主たる目的です。区画線を設けることにより、駐輪スペースが明確化され、自転車を一定間隔で整然と配列することが可能になります。
加えて、区画線の設置は駐輪場内の通路を確保する上でも重要な工程です。これは、自転車同士、あるいは自転車と歩行者の接触を防止するという重要な役割を果たします。
手順としては、プランニングに基づき、区画線を引く位置を厳密に確認します。その後、「墨出し」と称される下書き作業を実施します。続いて、ラインを引く箇所以外を汚損しないよう養生(マスキング)を行います。プライマーという下塗り材を塗布し、乾燥後、本塗装用の塗料で区画線を引く工程を行います。
駐輪場に自転車を整然と収容し、利用者の利便性を確保するためには、駐輪ラックの設置が極めて重要なプロセスです。
もっとも、「プランニングおよび設計」の項で既述の通り、ラックの形式および収容能力は、この段階で決定されている事項です。
設置作業においては、確定したプランニングに基づき、設置するラックの形式、設置位置、および数量を再度検証します。その後、個々のラックを固定するための穿孔作業、ならびに本体と地面を強固に固定する作業を実施します。
屋外のオープンスペースに開設する駐輪場の場合、雨天時における利用者の利便性確保には、屋根の設置が不可欠です。これにより、近隣に屋根のない駐輪場が存在する場合、競合優位性の向上という効果も期待されます。
屋根の設置に関しても、区画線設置やラック設置と同様に、計画はプランニングおよび設計の段階で既に決定されている事項です。当然ながら、その際には、地域の気象特性を考慮に入れる必要があります。
特に近年は、豪雨被害の発生が増加傾向にあるため、以下の配慮が望まれます。
上記の一連の作業が完了した後は、工事残材の撤去および清掃を徹底的に実施します。その後、計画通りに完成しているか否か、また利便性および安全性が確保されているか否かについて、最終確認を行います。
全ての項目において問題がないと確認された場合、運営管理者への引き渡しを実施します。さらに、必要に応じて、利用者となる近隣住民への説明会等の対応も行います。
駐輪場を新たに施工する際、利便性と収益性(あるいは公共性)を両立させるには、場当たり的なプランニングは禁物です。以下のポイントを踏まえ、事前の調査とシミュレーションを徹底することが、トラブルのない運用への鍵となります。
公共の駐輪場を施行する場合、設置場所の住所を管轄する自治体の条例で定められている附置義務台数(最低設置台数)をクリアしなければなりません。マンションであれば住戸数、商業施設であれば床面積に応じた最低設置台数の遵守が不可欠です。
また、利用実態調査に基づき、通勤・通学客の動向や住民の年齢層、時間帯による変動を鑑みた実効性のある計画台数を算出することが、超過放置や空きスペースの発生を防ぐことにつながります。
マンションや商業施設の駐輪場の場合、建物の出入口の近くを選び、アクセスのしやすさを優先。その上で防犯性や安全性、死角が少なくなる工夫などが求められます。敷地形状に応じた配慮も必要となり、例えば細長い場合は、駐輪スペースを片側に寄せてレイアウトするなどの対応が不可欠です。
空き地の有効活用や駅前への駐輪場新設にあたっては、歩行者や自動車との交通結節点としての機能を十分に考慮する必要があります。特に、歩行者の通行妨害や視界の遮りを防ぐため、路上への設置は極力避け、敷地内に整備する「路外型」を選択することが推奨されます。
駐輪スペースに必要な間隔は、一般自転車で40~50cm、大型では70cmが目安。通路幅は出し入れを行う箇所で2m、通行する箇所で1.5m以上を確保する必要があります。また、出入口に段差がある場合は、スロープ設置が不可欠。2段ラックを設置する場合は、天井高2.5m以上が求められます。
長期にわたり安全で快適な駐輪場を維持するためには、気象条件や環境へのハード面の対策が欠かせません。
まず、屋外施設では十分な張り出しを持つ屋根を設置し、雨天時の吹き込みを最小限に抑える配慮が必要です。併せて、強風によるドミノ倒し等の事故を防ぐため、サイドパネル(防風パネル)の設置や、アンカーボルトによるラックの強固な床固定が極めて有効な対策となります。
一方、屋内型駐輪場や地下駐輪場の場合は、多数の車両重量が集中することを想定し、施工段階で床の耐荷重を十分に強化しておくことが賢明です。また、排気ガスや湿気の滞留による環境悪化を防ぐため、機械換気設備の設置は必須と言えるでしょう。これらに加え、場内のクリーンな環境を保つためのゴミ箱の配置など、細やかな衛生対策が利用者のマナー向上と施設全体の資産価値維持に寄与します。
駐輪場は設置環境により「屋外型」と「屋内型」に大別されます。屋外型は耐候性対策が必須となる一方で施工コストを抑えやすく、屋内型は自転車の劣化防止や高いセキュリティを確保できる反面、建築コストが嵩む傾向にあります。それぞれの施工ポイントを整理していきましょう。
厳しい自然環境にさらされる屋外では、耐久性の確保が優先事項です。
限られた空間を安全かつ効率的に活用するための設計が求められます。
固定ラックの採用と照明装置の設置は、盗難防止の観点から屋外型・屋内型の双方で有効となります。また、駅前など利用者が多くなると予測される駐輪場では、利用者同士の接触事故防止の観点から、通路幅を2m以上としているケースが多く見られます。加えて、自動車の進入を防止するため、出入口に車止めを設置することも有効です。

自転車で来店する人が多い店舗の前に、乱雑に並べられていた自転車を整理する目的で、機械式無人駐輪場を設置した事例です。それまで、店舗を訪れる人以外も駐輪しており、駐輪スペースが混雑していました。
そこで一般利用者と店舗利用者のエリアを分け、それぞれの料金設定を変えて利用できるように整備。利用者は用途に合わせたスペースを選択しやすくなり、駐輪スペースが整いました。

駐輪場を新たに整備した事例です。コンクリートのスペースに、屋根を付けて駐輪できるスペースを確保しました。屋根と基礎工事を含め、工事にかかった日数は3日間です。屋根が設置されたことで駐輪スペースが明確になりました。

NCDは相模原市まち・みどり公社と協力し、駐輪場の機械化・自動化を進め、業務効率化と管理業務の負担軽減を実現。電磁ロック式駐輪機器や専門スタッフの常駐などを活用し、有人管理と自動化を両立した駐輪場を設置しました。24時間365日の体制でトラブルが減少し、運営効率も改善。地域貢献に繋がっています。


こちらは港区が依頼した事例。以前より主要駅前エリアでの放置自転車に悩まされており、運営する駐輪場も足りていない状況だったそうです。そこで区の協力を得て、周辺の商業施設や歩道の一角を利用するなどして、機械化・無人化方式の時間貸駐輪場を整備。利用者から「便利で使いやすくなった」との声が寄せられ、放置自転車の減少にも大きく寄与したそうです。

埼玉県草加市のマンションにおける導入例です。敷地内駐輪場の設置要望が多数寄せられていたものの、敷地面積が限定的であるという課題がありました。このため、昇降式二段ラックを導入し、平置きよりも大幅に多くの台数を整理して収容できるよう工夫されました。また、近年増加傾向にある局地的な集中豪雨(ゲリラ豪雨)対策として、堅牢な構造の屋根も設置されています。


東京郊外のベッドタウンに位置する大型商業施設の事例。同施設は駅に近い立地であることから、駅の利用者が不正に駐輪場を利用することに悩まされていたそうです。そこで導入に踏み切ったのが、駐輪時間に応じて料金が課金されるロック式ラックを用いた時間貸制システム。同システムの導入によって不正利用者は大きく減少し、施設利用者の利便性も向上したそうです。


こちらは、マンション敷地内の自転車駐輪場の改修事例です。このマンションには固定ラックを備えた屋根付き駐輪場が既に整備されていましたが、住人の方々からより多くの台数を駐輪できるようにしてほしいとの声が増えてきたそうです。そこで、既存の駐輪スペースは活かしながら、新たに昇降式2段ラックを設置し、屋根もより高さのあるものに変更。同じ敷地面積のまま、駐輪可能な台数が倍増できたそうです。

埼玉県内の高速道路高架下に立体駐輪場を設置した事例。言うまでもなく、立体駐輪場は限られた敷地面積を2階建てなら2倍、3階建てなら3倍に活用できるというのが大きな魅力。また製品や施工元によっては、最上階に二段式駐輪ラックを設置するといったことも可能。さらにはオートスロープや防犯カメラなどのオプションが用意されている場合もあり、まさに敷地を有効に活用できる方式と言ってよいでしょう。

神奈川県における本事例では、駅前バスターミナルに隣接するペデストリアンデッキ(歩行者専用高架道)の下部空間を駐輪場として有効活用しています。
外周の柵部分には不透過性のポリカーボネートパネルを採用しており、対面するマンションからの視線を適切に遮断。利用者のプライバシーを確保すると同時に、周辺住民への圧迫感を軽減する景観上の配慮がなされています。都市部の限られたスペースを活かしつつ、近隣環境との調和を図った優れた設計モデルといえるでしょう。

広島市のオフィス街において、一般の屋外駐輪場とシェアサイクルのサイクルポートを一体的に整備した事例です。
周囲のビル群が形成する都会的でスタイリッシュな景観との調和を図るため、屋根の質感や支柱のデザイン性に至るまで意匠性を重視。機能性一辺倒になりがちな駐輪場という施設を、都市の美観を構成するエレメントの一つとして昇華させた、付加価値の高い設計が特徴です。

兵庫県の駅前において、限られた予算内で敷地面積を最大限に有効活用したいというニーズに応えた整備事例です。
本施設では、中央1本柱構造の「Y字型合掌タイプ」の屋根を採用しています。一般的な両端支持構造に比べて柱の本数を大幅に削減できるため、地中基礎工事の負担が減り、高い施工性と低コスト化を同時に実現しました。足元がすっきりするため、限られた敷地内でも自転車の出し入れがスムーズに行えるという、利用者・オーナー双方にメリットのある設計が大きな特色です。

東京都中野区の集合住宅において、老朽化した駐輪設備の刷新により、居住者の利便性を大幅に向上させた改修事例です。
元々設置されていた固定式ラックは、経年劣化が進んでいただけでなく、近年の主流である「タイヤ幅が広く重量のある電動アシスト自転車」には不向きであるという課題を抱えていました。そこで今回の改修では、ラックの間隔を左右に調整できる「スライド式ラック」を採用。
隣り合う車両同士の干渉を防ぎ、スムーズな出し入れを可能にしたことで、駐輪時のストレスを大幅に軽減しました。利便性とあわせて、大切な車両を傷つけにくいという安心感も提供できているモデルです。

既存マンションの屋内駐輪場において、利用希望者の増加に伴う不足分を、限られた敷地面積のまま解消した改修事例です。
本事例では、空間を立体的に活用する「垂直昇降式ラック」と、横方向の密度を高める「スライド式ラック」を緻密に組み合わせたレイアウトを考案。
既存の床面積を一切拡張することなく、上下左右のデッドスペースを徹底して排除した結果、駐輪可能台数の大幅な増加に成功。大規模な増築工事を回避しながら、居住者の駐輪ニーズに即応した、コストパフォーマンスと実効性の高い都市型駐輪場モデルです。
駐輪場の導入は、どのようなスペースにどのような目的で導入したいかによって、必要な工事内容が異なります。ラインを引くだけで良い場合もあれば、ラックや屋根を設置したり、機械式にしたりとさまざまな要望が考えられます。ラックや屋根の設置には、自治体ごとに制限が設けられていることがあるため、事前に確認することが重要です。
まずは現状を確認し、目的や要望に合わせた駐輪場導入を検討しましょう。
本メディアでは駐輪場の導入を考えている企業に向けて、目的別におすすめの駐輪場システム会社を紹介しています。駐輪場システム会社選びで迷われている方はぜひ参考にしてください。
駐輪場の設置・導入を行っている企業の中でもそれぞれ得意分野や対応の範囲に違いがあります。有料駐輪場の設置から管理・運営まで行っている企業や、簡易式駐輪装置の設置を行っている企業などさまざまです。ここでは設置・導入の目的に合わせてそれぞれおすすめの企業を紹介します。

例えばこのような方に
中・大規模の駐輪場を検討している鉄道会社、商業施設、自治体、ゼネコン、デベロッパーなど
おすすめポイント

例えばこのような方に
駅近に狭小地や変形地を所有しているが、有効活用できず持て余している地主
おすすめポイント

例えばこのような方に
駐輪ラックの新設・改修を検討しているビルやマンションのオーナーや管理者
おすすめポイント
【選定条件】Googleで「駐輪場 システム」「駐輪場 土地活用」と検索して公式HPが表示された駐輪場設置業者40社を抽出(2024年6月26日調査時点)。
・NCD:駐輪場の企画・設置・管理運営までトータルで行っている企業の中で,対応範囲が一番広く、国内での対応箇所数が記載されている中で一番多かった点。
・パイン:土地活用系駐輪場設置業者の中で、短期スタートが実現可能で、変形地・狭小地への事例、国内での対応箇所数が掲載されている点。
・フルテック:簡易駐輪ラック販売設置会社の中でラックの種類が1番豊富な点。